V 新市まちづくりの将来像と基本的な整備方向

1 主要指標の将来見通し

(推計手法による将来予測)
コーホート要因法及びトレンド推計手法によって、主要な将来指標を予測してみると、次のとおりです。なお、ここでは、コーホート要因法で推計した将来人口をもとに、主要指標を予測しています。

(1)人口
本地域の人口は、昭和30年の77,010人をピークに減少傾向をたどり、平成12年には46,315人になっています。
コーホート推計(コーホート要因法)によって、新市の人口を予測してみると、平成27年には38,100人(対平成12年比△17.7%)となり、平成32年には35,200人(同△24.0%)になるものと想定されます。
また、これを年齢3区分でみると、合併後の年少人口(0〜14歳)は、平成27年には4,600人(総人口の12.0%)に減少し、平成32年にはさらに4,200人(同11.8%)に減少して少子化が進行するものと推測されます。
その一方で、高齢人口(65歳以上)は、12,900〜13,300人台と13,000人前後で推移するものの、総人口の減少によって構成比率は上昇し、平成17年には3割を超え、平成27年には34.8%(13,300人)、平成32年には36.8%(12,900人)になるものと推測されます。
この人口予測結果を市町別にみると、いずれにおいても人口の減少と少子高齢化が進み、鹿角市の総人口は平成32年に30,200人となり、小坂町は同年度に5,000人になるものと予測されます。

 

表  人口の推計結果(鹿角地域)               (単位:人、%)

年齢区分

基準年次
(国勢調査)

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

総人口

46,315

43,700

41,000

38,100

35,200

年少人口
0〜14歳)

6,231
13.4)

5,600
12.8)

5,000
12.1)

4,600
12.0)

4,200
(11.8)

生産年齢人口
15〜64歳)

27,546
59.5)

24,800
56.8)

22,800
55.7)

20,200
53.2)

18,100
(51.4)

高齢人口
65歳以上)

12,538
27.1)

13,300
30.4)

13,200
32.2)

13,300
34.8)

12,900
(36.8)

(注)この鹿角地域の推計結果は、コーホート推計で予測した1市1町の推計結果を積上げたものです。

 
表  人口の推計結果(鹿角市)              (単位:人、%)

年齢区分

基準年次
(国勢調査)

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

総人口

39,144

37,100

34,900

32,600

30,200

年少人口
0〜14歳)

5,369
(13.7)

4,800
(13.0)

4,300
(12.4)

4,000
(12.3)

3,700
(12.1)

生産年齢人口
15〜64歳)

23,317
(59.6)

21,100
(56.9)

19,500
(55.7)

17,300
(53.1)

15,400
(51.1)

高齢人口
65歳以上)

10,458
(26.7)

11,200
(30.1)

11,100
(31.9)

11,300
(34.6)

11,100
(36.8)

 

表  人口の推計結果(小坂町)               (単位:人、%)

年齢区分

基準年次
(国勢調査)

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

総人口

7,171

6,700

6,100

5,500

5,000

年少人口
0〜14歳)

862
(12.0)

800
(11.6)

600
(10.5)

600
(10.3)

500
(10.2)

生産年齢人口
15〜64歳)

4,229
(59.0)

3,700
(56.0)

3,400
(55.4)

2,900
(53.4)

2,700
(53.2)

高齢人口
65歳以上)

2,080
(29.0)

2,200
(32.4)

2,100
(34.1)

2,000
(36.3)

1,800
(36.6)

 
(2)世帯数
本地域の世帯数は、核家族化の進展などによって増加傾向をたどり、平成12年には14,886世帯になっています。
合併後の世帯数をトレンド推計(回帰式による推計法)によって予測してみると、平成32年には16,200世帯となり、さらに世帯数が増加し、世帯を構成する家族数は、3.11人(平成12年)から2.17人(平成32年)と縮小化するものと推測されます。
 

表  世帯数の推計結果                   (単位:世帯、人)

  

基準年次

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

世 帯 数

14,886

15,100

15,300

15,700

16,200

世帯規模

3.11

2.89

2.68

2.43

2.17

(世帯数の
  回帰式)

Y=AX+BX+C  相関係数:0.85441
  A:2.10857142857143
  B:-8411.99428571429
  C:8404590.48571428

※ X=西暦  Y=世帯数
(注)「世帯規模」は、1世帯あたりの家族数を意味しています。
将来の世帯規模については、コーホート推計人口/推計世帯数で求めています。


 
(3)産業別(3区分)就業人口
平成2年以降の産業別就業人口の推移をみると、就業率(就業人口/総人口)そのものが減少傾向をたどりつつ、第一・二次産業は減少傾向、第三次産業は横ばい傾向を示しています。
このなかで、特に第一次産業の減少傾向が著しく、トレンド推計によると、平成32年には就業人口がマイナスへと変化することが想定されます。
このような推計値は非現実的で、実際は起こりえないことですが、この推計結果は農林業の経営環境の厳しさを指摘するものであり、新たな施策を大々的に講じる必要があることを意味しています。
したがって、ここでの産業別就業人口については、以下の手順で将来の施策を想定し、それを前提条件として将来の就業人口を試算してみることとします。

□ 本地域の就業率は年々減少傾向をたどり、将来においても減少していくことが推測されますが、高齢者と女性の就業機会が拡大することが想定されるため、合併後の就業率を50.0%と見込みます。(ただし、平成17年については、直近のため、推計した就業率を採用しています。)
□ 第一次産業就業人口については、加速度的に就業人口が減少し、トレンド推計によると目標とする平成32年にはマイナスへと変化しています。しかしながら本地域の農業は中心的な産業であり、今後も就業人口比率10.0%を維持していくこととします。
□ 第二次産業就業人口については、近年、就業人口は減少傾向にありますが、特に若者の就業の場として第二次産業の果たす役割は大きく、将来の就業人口比率を35.0%と想定します。
□ 第三次産業就業人口については、近年、増加傾向にあり、今後も観光サービス業を中心に発展する可能性が高いことから将来の就業人口比率を55.0%と見込みます。

以上の考え方を前提とし、前記の推計人口をもとに産業別就業人口を推計してみますと、下表のとおりになりますが、これらの数値は、今後の施策如何によって大きく左右されます。

 

表  産業別就業人口                     (単位:人、%)

区分

基準年次

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

産業別就業人口

(人)

一次産業

3,510

2,500

2,100

1,900

1,800

二次産業

7,605

7,100

7,200

6,700

6,200

三次産業

11,820

12,000

11,300

10,500

9,700

分類不能

7

合計

22,942

21,600

20,600

19,100

17,700

産業別就業人口
構成比率

(%)

一次産業

15.3

11.4

10.0

10.0

10.0

二次産業

33.2

32.9

35.0

35.0

35.0

三次産業

51.5

55.7

55.0

55.0

55.0

分類不能

0.0

合計

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

就業率
(就業人口/総人口)

49.5

49.4

50.0

50.0

50.0

※ X=西暦  Y=産業別就業人口
(注)第1次産業就業人口を回帰式(Y=AX2+BX+C 相関係数:0.98634、
A:0.228571428571429、B:-1094.11428571429、C:1277298.28571429)で
トレンド推計すると、平成32年には就業人口がマイナスに変化します。

 
(4)産業別(3区分)市内純生産額
県の県民経済計算によると、本地域の近年の産業別純生産額は、第一次産業と第二次産業が減少傾向を示し、第三次産業が増加傾向を示しています。
この傾向をもとに回帰式によってトレンド推計してみると、第一次産業と第二次産業の純生産額は、平成22年にはマイナスへと変化してしまいます。
そのため、ここでは、平成12年の実績値をもとに、就業人口一人当たりの純生産額を産業別に求め、これを前で推測した将来の就業人口に乗じて推計してみました。
なお、新市の市内純生産額は、平成12年価格で求めています。

□ 第一次産業  就業人口一人当たり純生産額  1.6806百万円
□ 第二次産業      同       3.0735百万円
□ 第三次産業      同        5.9887百万円

 

表  産業別市内純生産額                   (単位:百万円、%)

区   分

基準年次

推計年次

平成12年
2000)

平成17年
2005)

22
2010)

27
2015)

32
2020)

産業別

純生産額
(百万円)

一次産業

5,899

4,200

3,500

3,200

3,000

二次産業

23,374

21,800

22,100

20,600

19,100

三次産業

70,786

71,900

67,700

62,900

58,100

合計

100,059

97,900

93,300

86,700

80,200

産業別純生産額構成比率

(%)

一次産業

5.9

4.3

3.7

3.7

3.7

二次産業

23.4

22.3

23.7

23.8

23.8

三次産業

70.7

73.4

72.6

72.5

72.5

合計

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

※ X=西暦  Y=産業別純生産額
(注)第一次産業の純生産額を回帰式(Y=AX2+BX+C 相関係数:0.98126、
A:-23.0、B:91455.2、C:-90904431.4)でトレンド推計すると、平成22年には
純生産額がマイナスに変化します。
また、第二次産業の純生産額を回帰式(Y=AX2+BX+C 相関係数:0.94438、
A:-181.928571428571、B:724693.271428571、C:-721648235.8)でトレンド推計
すると、平成22年にマイナスになります。


 
(5)市民分配所得
市民分配所得は、市内純生産額と比較的密接な関係にあるとみることができます。
このことを前提に、両者の関係を市内純生産額に占める市民分配所得の割合(市民分配所得/市内純生産額)でみることとし、この構成比率をもとに推計します。
平成8年から平成12年の期間では、この比率が平均で101.1%になります。Cの市内純生産額の推計結果にこの構成比率を乗じ、平成32年の市民分配所得を求めてみると、811億円となり、一人当たりの市民分配所得は230万円と推測されます。
 

表  市民分配所得の推計結果               (単位:百万円、千円)

区  分

基準年次

目標年度

平成12年
(2000)

平成17年度
(2005)

22
(2010)

27
(2015)

32
(2020)

市民分配所得
(分配、百万円)

103,660

99,000

94,300

87,700

81,100

一人当たり市民分配所得
(千円)

2,177

2,270

2,300

2,300

2,300

(注)一人当たり市民分配所得は、市民分配所得/将来人口で求めました。

 
2 新市まちづくりの理念と将来像

(1)まちづくりの基本理念
前述の「U鹿角地域の課題と発展の方向性」において、鹿角地域の現状と分析から地域的課題を次の9項目に整理しました。

@ 人口の減少、少子高齢化、核家族化への対応
A 停滞している産業の振興
B 市民分配所得の向上
C 住民の広域的活動への対応
D 魅力的な市街地整備と商業の活性化
E まちづくりへの交通網の活用と生活空間に配慮した道路整備
F 健やかで安心できる福祉サービスの確立
G 歴史遺産・地域文化の伝承
H 地方分権の推進と行財政基盤の強化

地域社会が、成熟社会、低成長社会状況に直面し、国・地方とも厳しい財政状況にある中で、新市がこれらの課題に取り組むためには、行政、住民がともに「自立」し、自立した個人、団体と新市が「協働」してまちづくりを進めていくことが必要です。
また、近隣自治体、都市等との「連携」を深め、地域の能力を最大限に発揮できる体制づくりによって新市が持続的に発展していくことが可能になります。
こうした考え方に基づき、新市においては、「自立」、「協働」、「連携」の3つを基本理念としてまちづくりを進めます。

   @ 「自立」
今後予定されている「第2次分権改革」において市町村の抜本的な制度改革がどのような方向をたどるかは不透明な状況にありますが、三位一体改革の議論等を見るとき、さらなる権限の移譲が行われ、行政の関与の整理が進むとともに、少なくとも市町村はより一層の自立と自助を求められることは確実です。
また、すべての地域が最低限満たすべき基準を確保するという視点から、地域ごとの最適化を求めるという流れの変化の中で、市町村は、自らの将来に対して自ら方向を見極め、自ら個性豊かな地域社会を築きあげていくという、地方自治本来の姿を実現していくことが、改めて重要になっています。
そのため、新市においては、真に自分たちの力で豊かな暮らしと地域社会を築いていく必要があり、住民が自分たちのまちを自分たちの力で興そうという自助・自立≠フ姿勢を育むための人づくりを進めます。

また、地域と住民の自立を促すためにも、まずは、地域産業の振興により住民個々人の所得の安定、増加を図りつつ、経済的にも自立できるようなまちづくりを進めるとともに、地域コミュニティ、ボランティアグループの育成支援によってまちづくりサポート体制を強化し、安定した財政基盤と住民自治の基盤づくりを図ります。

   A 「協働」
まちづくりの基礎となるのは、永い間培われてきた地域の風土・歴史・文化の中で、住民が鹿角地域の環境・特性に応じた豊かさを享受し、自らのまちに誇りと愛着を持ち、まちの遺伝子として住民がこれを継承していくことです。
まちに誇りと愛着を持つためには、住民自らも行政に参加し、まちの問題を自らの問題として積極的に解決しようという風土を醸成していくことが必要です。
そのため、中心となってまちづくりを担う人材の育成・確保や、その前提となる働く場の確保をはじめ、子どもたちの教育を地域全体で支える環境づくり、住民が交流し、学び、楽しむ場づくりなどを通じて協働の芽を育みます。
閉塞感の漂う社会経済情勢の中にあって、住民が誇りと愛着という遺伝子を受け継いでいくことで、持続的に発展可能なまちづくりが実現されるものと考えます。
地域全体が輝き、生きがい・やりがい・働きがいを実感できるまちづくりを目指し、公共交通機関や上下水道の整備、学校教育、子育て環境づくり、保健・医療・福祉、消防・防災、防犯といった多様な施策を住民や関係団体との協働を基本に総合的に推進します。

   B 「連携」
鹿角地域は、産・学・官をはじめ、公共、民間施設等においても、すべてのものが備わっているわけでもなく、今後も完備を求めるには限りがあり、また、地域が生き残るためには、これらをすべて揃えることが得策であるとは必ずしもいえません。
したがって、新市のまちづくり戦略もすべてを新市単独で進めることにこだわらず、広域で連携し合う視点が重要です。広域での連携という視野に立てば、活用できる資源はいたるところにあり、これを地域の発展に結びつけるような方策こそが必要なのです。
そのため、情報・通信技術を活用し、地域内外への情報提供を充実することによって広域的な連携を図り、地域づくりに知恵を与えてくれるいろいろな分野の人たちとの「知のネットワーク」を広げ、広域的な地域資源を活用しながら地域の潜在能力を最大限に発揮することが新市の発展のかぎになります。

(2)新市の将来像
新市においては、「自立」、「協働」、「連携」の3つをまちづくりの基本理念とし、それぞれの人が自分の生き方、暮らし方に自信を持ち続けることができる

   『歴史・文化・自然が彩る環境共生都市』

〜自立・協働・連携による
『新しいまち』の創造をめざして〜

を実現します。
この将来像は、合併後においても、この鹿角地域で、誇りをもって活動していくことができるよう、強い願いをこめたメイン・テーマであり、また、行政区域の異なる1市1町の住民が速やかに一体性を築き、地域が一丸となってまちづくりを進めるためのメイン・テーマでもあります。

3 新市まちづくりの基本的方向

前でのべた地域の「自立」と「協働」、「連携」による新市の将来像を具現化するために、次の6つの基本的なまちづくりの方向に基づき、さまざまな施策を推進します。


@ 自然と魅力があふれるまち
− 人と自然と文化が共生し、技術と魅力を活かしたまちづくり −
A 活力と豊かさを育てるまち
− 大地の恵みと地域の技術を最大限に活かした活力あるまちづくり −
B ふれあいとつながりを創るまち
− 人と情報が活発に交流する活動的なまちづくり −
C 郷土愛とゆとりを育てるまち
− 郷土愛を持ち、心豊かにゆとりを持って暮らせるまちづくり −
D 安心と生きがいを育てるまち
− だれもが健康で生きがいを持って暮らせるまちづくり −
E 工夫と参加で創るまち
− 行財政改革を進め、住民と協働で創造するまちづくり −

また、これまでに述べた新市のまちづくりの課題、基本理念、新市の将来像とこれらのまちづくりの基本的な方向を図で総括すると、次のようになります。

 
 
図  まちづくりの課題・理念・将来像と基本的方向
 
 
 
 
(1)自然と魅力があふれるまち
〜人と自然と文化が共生し、技術と魅力を活かしたまちづくり〜
 
@ 自然環境の美化と保全
鹿角地域は雄大な十和田湖や八幡平の自然環境に恵まれ、人々もこの自然と共生し豊かな心を育んできました。この貴重な自然を守り後世に受け継いでいくためには、地域住民の意識を変えていくことが重要であり、新市においては環境基本計画に基づき環境保全に努め、住民意識の醸成とさまざまな分野で啓発を行っていきます。
また、循環型の快適環境社会を構築するため、住民への資源リサイクル意識のより一層の高揚を図り、廃棄物の排出抑制・減量化と再資源化を官民一体となって進め、住民参加のリサイクル、リサイクル産業の創出、新エネルギーの導入など、環境にやさしく、環境と調和した地域社会の形成に努めます。
地球環境に大きな影響を及ぼす問題の一つがエネルギー問題であるといわれています。そのため、今後も環境に優しい水力、地熱、太陽熱などの新エネルギーの利用促進を積極的に進め、環境問題への対応を図るだけではなく、新市のイメージアップと地場産業の振興に努めます。

A 観光・レクリエーションの振興
観光・レクリエーションについては、国においても経済不況脱出の突破口のひとつとして「観光産業」を掲げており、自然や温泉などの観光資源を多く有する地方において、これまで以上の地域間競争が行われるものと予想され、より一層の本地域の魅力形成に努めなければなりません。
十和田八幡平国立公園に代表される自然との共生では、四季の変化を積極的に活用し、特に冬場の誘客を推進します。またマインランド尾去沢・小坂鉱山事務所・康楽館などの鉱業遺産、大日堂舞楽・毛馬内の盆踊・花輪ばやしなどの文化・芸術、大湯環状列石などのロマンを活かした観光ときりたんぽやワインなど本地域ならではの「食」とを一体化させ、地域の連携による観光ルートの確立、ホスピタリティの強化などを進めます。
年間を通じた効果的なPRの実施、観光客が安心して旅行できるための観光情報の提供や発信、案内機能等を持ち合わせた施設の整備、鹿角地域全体をまるごと博物館と捉え自然や文化遺産を保存・展示するなど、交流人口の拡大やリピーターの確保に向けて施策を展開していきます。さらには今後需要の増加が見込まれる都市と農村の交流をベースにしたグリーンツーリズム(農山漁村地域における土地の自然・人々・文化との交流を目的とした滞在型の余暇活動)、エコツーリズム(自然環境をみださず植林の修復などボランティア活動を中心とした観光ツアー)なども組み入れながら、魅力ある観光地づくりを推進していきます。

(2)活力と豊かさを育てるまち
〜大地の恵みと地域の技術を最大限に活かした活力あるまちづくり〜
 
@ 農業の振興
農業については、産地間競争に勝ち残っていくためにも、地域農産物のブランド化を進めていきます。そのためには、意欲と経営感覚に富んだプロの経営農家を育成する必要があり、農地の集積を進めるなど経営基盤の強化を側面から支援します。
また、農業従事者の高齢化と新規就農者の減少による担い手不足が危惧されるため、農業の生産法人化について検討するほか、地域外からの意欲的な新規就業者の受け入れ体制の整備を図るなど、担い手確保のための施策を積極的に推進します。
その一方で、農業関連分野への就業機会を拡大するため、グリーンツーリズム、エコツーリズムと連動したアグリビジネスなどを創出し、新たな雇用の場づくりに努めます。
農業もまた、家畜排泄物や生ごみなど有機性資源から作られる有機質堆肥の活用など循環型社会の構築を目指し、環境保全型農業を推進します。

A 林業の振興
林業については、林道などの基盤整備を図り、生産性の高い林業経営を進めるとともに、施業の協同化と若手林業技術者の確保・育成に努めます。
また、積極的に木材を利用するとともに、森林組合などと連携を図り、木材の需要の拡大に努めます。
また、きのこなどの特用林産物については、低コストの生産体制を整備することで生産拡大を進め、農家林家の複合経営の確立と雇用の場の確保に努めます。
その一方で、森林の持つ国土の保全、水源の涵養、防災機能など公益的機能を維持・増進しながら自然生態系の保全に努め、森林空間を活用した観光、スポーツ・レクリエーションの多面的利用を促進します。

B 水産業の振興
十和田湖における淡水魚類の養殖を中心とした内水面漁業を推進します。また、その他の内水面漁業を活用した湖畔や河川における体験型レジャーの普及により、鹿角地域への誘客拡大に努めます。

C 商業の振興
商業については、既存の商店街の活性化が急務であり、既存の商業団体の組織強化やTMO(タウン・マネージメント機関)の組織化を推進するなど、地域ニーズに合った経営の近代化、経営指導、空き店舗の利用促進を進めます。
また、商店街は市街地の中心地に立地しており、市街地の整備によって賑わいと出逢いを生み出す魅力的な商店街が形成されることから、娯楽施設をはじめ、多様な公的、民間施設を誘導し整備を進めるとともに、魅力ある環境づくりのため街路整備を進めます。
観光都市としての特色を活かし、観光と結びついた商業活動を支援します。

D 工業の振興
工業については、鉱業技術を活かした資源リサイクルやゼロエミッションを目指したエコタウン事業を鉱業に続く新たな産業として位置付け、秋田県北部エコタウン計画や金属鉱業研修技術センターと連携し、工業の再生と新たな産業起こしを進めます。
極度の経済不況と生産拠点の海外移転、産業の空洞化などの中にあって、産業構造が大きく変貌しつつあることから、新分野や新たな事業に取り組む企業への支援と、異業種・異産業間の交流を進めます。
また、地域資源活用型ともいえる地場産業を中心に企業起こしを進めるとともに、高速交通網を活かしたインターチェンジ周辺への企業誘致に努めます。

 
(3)ふれあいとつながりを創るまち
〜人と情報が活発に交流する活動的なまちづくり〜
 
@ 交通網の整備
@ 道路網の整備
活動的なまちづくりを進めるためには、まちの骨格となる域内の道路網が整備されていることが必要となりますが、本地域の広大な行政面積を補う道路網の整備は十分とはいえません。また道路改良率も低いことから生活道路としての機能の充実も急務となっています。
道路の持つ機能を充分活用することで地域経済の向上も促進されることから、冬期間の交通確保も含めた循環性・安全性・アクセス性など、それぞれの目的に対応した道路整備を進めるとともに、国・県道や高速交通体系との有機的なネットワークを構築し、計画的な整備を進めます。

A 公共交通機関の充実整備
今後も進む高齢化や広域化する生活圏の拡大に対応するためにも、バスなどの公共交通機関の一元的な運行体制を見直し確立するとともに、コミュニティバス、スクールバス、タクシーの利用対策について検討し、需給均衡と住民の利便性が図られた公共交通輸送システムを構築します。
また、広域的な地域間交通の充実を図るため、鉄道の運行維持に努めます。

A 情報・通信の整備
産業、生活、医療、福祉、行政などのさまざまな分野の中で情報化を促進することで、住民の快適性の向上や地域産業の活性化が図られるよう国・県の高度通信ネットワークと連携し、情報通信基盤の整備を促進します。
また、こどもからお年寄りまでパソコンの利用技術などをマスターすることができるパソコン教育の普及やパソコン教室の開催に努めます。

B 生活環境・交流環境の整備
豊かな自然環境に囲まれ、人々のあたたかいふれあいの中で、より快適に暮らせるよう、住宅や上下水道など住環境の充実整備を進めます。
また、本地域としての市街地及び農村・山村空間は、生産の場であり、生活の場であり、交流の場でもあります。そのため、公園、緑地、親水・森林空間の整備を進め、快適な生活・交流空間づくりに努めます。

 
(4)郷土愛とゆとりを育てるまち
〜郷土愛を持ち、心豊かにゆとりを持って暮らせるまちづくり〜

@ 学校教育の充実
学校完全週5日制がスタートし、ゆとり教育が推進されていますが、それを活用して資源のリサイクル技術や農林業にふれる機会、ボランティア活動などのさまざまな体験の場を創設し、地域の後継者育成と人間性の醸成などに努めます。
児童・生徒の基礎学力の向上はもとより、郷土への理解と愛着を深め、情操を高めるふるさと教育を充実し、また、すべての子どもたちが安心して学び、遊び、交流する教育環境づくりを進めます。また、高等教育機関が地域の教育水準を維持する上で大きな役割を果たすことから、ユニークな学科の新設など、学科等の改編について強く要望し、特色ある学校づくりに努めます。

A 生涯学習の充実
生涯学習では、「地域社会に貢献できる人材の育成」、即ち新市を担う「人づくり」のプログラムを開発・充実し、また、生涯を通じて人間性豊かな潤いのある生活を送るための施策を推進します。
このため、生涯学習活動における中心的な役割を果たす生涯学習拠点の整備を進めます。

B 青少年の健全育成
地域活動によって地域住民の認識を深め、地域の教育力を高めることによって、地域の青少年の確かな心身の成長を地域で責任を持つという意識を醸成し、健全育成を図ります。
また、健全育成のための学習機会や話合いの場の拡大などにより、学校と地域での情報交換を活発にし、健全育成を支援します。
その一方で、世代間を超えた交流を通じて若者を主役に据えた文化を醸成していくなど、青少年が夢を持ってこの地域で暮らしていくことができるような環境づくりを進めます。

C 地域文化・スポーツの振興
古くから伝わる多くの有形・無形の文化遺産を保護・保存し、伝承を奨励しながら小坂鉱山事務所や康楽館などを活用した個性的なイベントなど多様な文化活動を推進します。
さらには、今後ますます進展する国際化に向けて異文化に触れ国際理解を深めることで、国際感覚の醸成や地域リーダーの育成を図ります。また地域間や世代間における文化や知識の交流によって、地域資源の発掘や魅力の創造、相互の特長を生かした機能分担など、国際交流や地域間交流、世代間交流を通して新たな文化の創造を図ります。
また、スポーツの振興については、各地域のスポーツエリアが連携して住民誰もがスポーツを楽しめるよう生涯スポーツの普及・推進を図るとともに、これまで世界で活躍する多くの選手を輩出してきた実績をもとに、指導者等の養成と優秀な選手の育成を目的とした競技力のレベルアップに向けた組織の形成を目指します。

D 男女共同参画の促進
男女が互いの特性を認め、個人として尊重し合い、地域・職場・家庭などのあらゆる分野で対等な構成員として、生きがいと誇りを持ち、共に責任を分かち合える社会を構築します。
そのため、子育て支援や介護サービスなどにおいて啓発活動を推進し、男女共同参画の実現をめざします。

(5)安心と生きがいを育てるまち
〜だれもが健康で生きがいを持って暮らせるまちづくり〜
@ 保健・医療の充実
住民が健康で文化的な生活を営むために、地域中核病院の整備を推進し、安心できる医療体制の整備に努めます。
保健・医療と福祉との連携により、すべての人々が日常生活の中で助け合っていくという考え方を基本理念として総合的なサービスの充実を図ります。

A 社会福祉の充実
社会福祉関係団体やボランティア団体など、多様な民間の活動団体を育成・支援するとともに、住民が積極的に参加する地域福祉活動を推進します。
高齢者や障害者が福祉サービスを必要とする場合に、本人が望む場所で望むサービスを選択することができる行き届いた福祉サービスを提供するシステムを構築します。
また、保育ニーズの多様化に対応するため、幼保一体化や乳児保育、延長保育、一時保育などによる保育サービスの拡大、子育て支援ネットワークづくり、児童福祉施設の充実整備などを進め、子育て支援体制を確立します。さらに、少子化に対応し出生率の向上に寄与するため、子育て費用の支援など育児負担の軽減に努めます。
このような施策と合わせてまち全体のバリアフリーによる環境整備を推進し、高齢者や障害者が買物や散策、地域の行事などにも気軽に参加でき、健康で楽しく生活できるまちづくりを進めます。

B 消防・防災、防犯対策
住民が安心して快適な生活を営んでいくために、あらゆる場面を想定して消防・防災、防犯の体制と機能の整備・充実を図り、災害に強いまちづくりを進めます。

(6)工夫と参加で創るまち
〜行財政改革を進め、住民と協働で創造するまちづくり〜
@ 住民参加の促進
今後、地方分権による「自己決定・自己責任」の原則のもと、行政への住民参加や住民と行政との協働ということがますます求められます。
そこで、地域住民が積極的にまちづくりに参加するためにも、新市における地域審議会の設置はもとより、情報公開、政策評価、住民意識調査や懇談会等の実施など住民参加が円滑に行われるシステムを構築します。

A 個性あるコミュニティづくりと活動への支援
1市1町のそれぞれ特色あるコミュニティを尊重し、新市の一員という視点を加えた上で、住民の意識の高揚を図り、自主的な取り組みや個性的なコミュニティづくりを支援します。
また、住民の自治参加意識を高め、自治会組織等の自立を促すことによって、分権型社会において求められている自己決定・自己責任に基づく地域づくりの推進を図り、意欲あふれる住民やNPOなどによる個性的で魅力的な地域づくりを支援します。
 
B 行財政の健全な運営
厳しい社会経済情勢や財政が逼迫している中で、行財政改革をスムーズに実行していくためには、行財政改革指針に従い事務事業の見直しを行い、民間との役割分担を図る中で、民間の技術と能力を最大限有効に活用することが求められています。行政がやるべきものと民間に任せてよいものを見極め、行政のスリム化を図る必要があり、これにより行政サービスの維持・向上と新たな行政需要への対応が可能になります。
また、合併後においても厳しい財政状況が想定されますが、財政の健全性を保っていくためにも、しっかりとした行財政改革指針を策定し、情報公開や政策評価システムを充実するとともに、早期に地域の一体性を確立するため合併特例債等を計画的かつ効果的に活用していきます。

C まちづくりのための職員の育成
地方分権による行政事務の高度化、住民ニーズの多様化に対応するため、職員は従来にもまして意欲・能力の発揮と倫理の確立が求められるものと考えます。
そのため、職員の意識改革に努め、新市においてまちづくりを担う専門的で高度な知識を持った人材を計画的に育成します。

 
4 新市まちづくりの戦略的施策

新市のまちづくりに向けた基本理念と将来像の実現を図るためには、重点的かつ戦略的に施策を推進していく必要があり、このような施策を「新市まちづくりの戦略的施策」として位置付けます。

 
■ 参考:本構想での位置付け ■

現状分析
     ↓
基本課題  (まちづくりに向けた9つの基本課題)
     ↓
基本理念  (まちづくりの3つの基本理念)
     ↓
将来像  (新市がめざすべき将来像)
     ↓
基本的方向  (6つの基本的方向)
     ↓

      ↓
リーディング・プロジェクト (基本方向に基づく主導的なプロジェクト)  

 
(1)自然と魅力あふれるまち
鹿角地域は世界に誇れる自然や技術力があります。
この財産を後世に受け継ぎ、さらには鹿角の特色ある産業や事業として発展することで、鹿角の魅力が最大限活かされます。
十和田・八幡平の雄大な自然を守り、鉱山のまちが培った技術や歴史遺産を活用することで、優れた自然環境と産業との共生を図っていきます。
 
図  魅力あふれるまちにしていくために
 
 
(2)活力と豊かさを育てるまち
鹿角地域には豊富な大地の恵みと魅力ある資源があります。
こういった恵みと資源を活かした基礎となる産業を強化するとともに、新しい手法や鹿角独自の地域資源を活用して産業の活性化に取り組みます。
また、観光都市や高速交通網という特色と鹿角の産業基盤を連携し、活力あるまちづくりを進めます。
 
図  活力のあるまちにしていくために
 
 
(3)ふれあいとつながりを創るまち
人口流出に歯止めをかけることにより地域活力の低下を防ぎ、特に若者の定住は少子高齢化が進展する中にあって、地域に活力を与え、産業をはじめ様々な分野に好影響となります。
したがって、すべての住民が快適な住環境のもと、人と情報が活発に交流する活動的な環境づくりに取り組みます。
 
図  ふれあいのまちにしていくために
 
 
(4)郷土愛とゆとりを育てるまち
鹿角の自然や文化、伝統は大切な財産です。
この培ってきた財産を大切にする心を育み、さらに後世に引き継いでいく人材の育成が重要です。
鹿角の郷土を愛し、人間性豊かな人づくりを行うとともに、個性的で新たな文化を創造する環境づくりに取り組みます。
 
図  郷土愛のまちにしていくために
 
 
(5)安心と生きがいを育てるまち
高齢化や障害者の社会参加が進む中で、すべての人が安心と生きがいをもって暮らせる環境づくりが必要です。
可能な限り利便性の高い社会福祉を推進し、誰もが快適に生活できるまちづくりを総合的に取り組みます。
また、住民が安心して生活を営むことができる防災のまちづくりを進めます。
 
図  安心して暮らせるまちにしていくために
 
 
(6)工夫と参加で創るまち
地方分権時代の中で、自らの地域のことは自ら決定し、結果に対する責任も自ら担うことができるように、活発な地域自治活動と、住民が主役となり得る協働によるまちづくりに取り組みます。
また、スリムな行政組織づくり、施策の評価、コストの縮減などによって、効率的な行財政運営を進め、財政基盤の強化を図ります。
 
図  工夫と参加のまちにしていくために
 
 
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