樹の腐朽防止行動  巻き込み

 この写真は先日、茨木県で活躍している「関 敏之樹木医」から提供を受けた「木の枝の写真」です。材木部分は腐朽によってほぼ形を失っておりますが、
幸いにして、タケノコ状に見える「枝の根元部分」はしっかり残っておりました。枝は樹皮表面から出るのでなく、木の「芯」から出るというのを明確に表しています。
そして、このタケノコ状の部分が板にしたときに表れる節目です。
前置きはこのくらいにして、この構造を頭に置いて枝の切り方を述べてみます。



下記の図は、「堀大才・岩谷早苗著 図解 樹木の診断と手当  農文協」のP165から引用した物です。
樹木の枝を正しい位置で切断すると樹皮が切り口を巻き込み、更に、その上に年輪の形で材部が覆って切り口を消してしまいます。
こうなると、切り口からの腐朽は発生しません。しかし、切断場所が悪いと巻き込みが起こらず、結果として枝が腐朽し、その腐朽菌が枝の根元
である木の芯部分まで到達し、樹木全体を腐朽させます。枝の剪定時には下図を参考にしていただきたい。



具体的には
切断したい枝の「ブランチカラー」という枝の付け根部分にあるシワの場所のすぐ上を切断する。
切断後はそのままにしても良いのであるが、できれば腐朽防止のため塗布剤を塗るのがお勧めである。
塗布剤にトップジンMペースト・ベフラン塗布剤・バッチレートが一般的である。この木の場合は、キニヌール木固め剤の組み合わせで試してみた。




写真のように巻き込みが始まり、まもなく切断面を包み込もうとしている。


これは、宮城県の鳴子温泉へ観光に行った時に写した道ばたの樹である。写真のように誰も枝を切り取ってくれなかったため、巻き込みが止まっている。この枯れ枝は精一杯腐朽防御活動をしているとは思うが、いずれはこの枝から入った腐朽菌が健康な幹にまで入り込み「煙突状に芯腐れ(空洞)」を引き起こすことは確実である