4、食べるとやばいキノコ
 理科の教師だから毒を食べることはないだろうと言われますが、根っからのいい加減な性格から、何回か危ない目に遭ってきました。皆さん気をつけましょう。

(1)ツキヨタケ
 ハラタケ目 キシメジ科 ツキヨタケ属の和名「ツキヨタケ」です。松茸に似た色、ヒラタケやムキタケ似た形から、少しは疑ったのですが、多分ムキダケだろうと勝手に判定し、みそ汁に入れて食べてしまいました。食べてから30分後、言いようのない吐き気が襲い、外に出て食べたものを全て戻してしまいました。そのまま病院に行けば、確実に次の日の新聞に「鹿角の理科教師、毒キノコを食べて入院・・・・」と載ることを考え、塩水を飲んでは吐きを繰り返し、窮地を脱しました。次の日の胃袋の筋肉痛は経験した人でないと分からないでしょうね。後で図鑑を見たら、ツキヨダケを横に裂いた時、石突きの部分にあるムラサキ色のシミがそのキノコ専用の判定法であることを教えられました。また、暗闇に置けば裏のひだが黄白色に発光します。皆さん私みたいなことをしないようしっかり注意しましょう。しゃくに障るのは、最盛期に、山一杯がこのツキヨタケで覆われることです。


(2)ツチスギタケ
 ハラタケ目 モエギタケ科 スギタケ属の和名「ツチスギタケ」です。ナメコを取りに行けば、ナメコのようなヌメリがあるもののカサにとげ状の鱗片をもつキノコがあります。これがナメコの仲間の本家に当たるヌメリスギタケ(左の写真)です。これは、ナメコ以上においしいキノコなのですが、これに実によく似ていて地面に生えるのがツチスギタケ(右の写真)です。この中毒になった時、私は間違いなくヌメリスギタケだと確信し、大量に採取し、翌朝のみそ汁に入れました。随分粘りのないスギナメコだなと思いながらもしっかり食べてしまいました。それから1時間〜2時間後、どうしようもない吐き気に襲われ、またまた胃袋をひっくり返してしまいました。怪しいキノコは食べないのが鉄則です。
                                                             

(7)ナメコ
 
ハラタケ目 モエギタケ科 スギタケ属の和名「ナメコ」です。10月中旬から11月雪が降るまでの長い間収穫できます。ブナの伐根や倒木に発生しますが、以前、横倒しになった大木の全面に生えたナメコを見たときは本当に感動しました。まさに茶色いダイヤの表現がぴったりします。ナメコは洗っても壊れないので指でばりばりと剥がして採取します。むしろ刃物で切り取ると、その鉄分が来年からのキノコの出を止めると言われていますので、是非、手で取ることを勧めします。調理法は何と言ってもナメコ汁でないでしょうか。特に小粒のものは最高級の風味を示します。この写真は秋田市の鈴木様から提供していただきました
(6)マツタケ
 ハラタケ目 キシメジ科 キシメジ属の和名「マツタケ」です。アカマツとナラの混成林にありました。最初は、やけに松茸に似た大きいキノコがあるものだと、疑いのまなざしで採取し、専門家におそるおそる見せたところ、間違いなくマツタケだと言われ、早速記念写真を撮りました。次の年、また同じ場所に10本程度見つかり、当時教員住宅で隣組であった現秋田市在住の鈴木様とお椀に一本ずつ入った豪勢なお吸い物を食べた記憶があります。歯ごたえといい、香りといい、キノコの王様の風格が十分漂っていました。調理法はお吸い物、土瓶蒸し、松茸ご飯、そのままお酒に入れてマツタケ酒等、取れさえすれば楽しみ方は多彩です。

 
(5)サワモダシ
 ハラタケ目 キジメジ科 ナラタケ属の和名「ナラタケ」で、鹿角ではサモダシ、サワモダシ、ボリボリと言っております。キノコの内で一番親しまれているのがこの菌だと言っても言い過ぎでないでしょう。9月中頃から顔を出し始め、10月初旬まであちこちで大発生します。主としてブナやナラ林に群生しますが、条件のいいときには土に直接生えることも珍しくありません。この菌を取るときの注意ですが、ナメコやカノカはそのまま採取しても、後で洗浄できますが、このサモダシだけは材質がもろいので、少し力を入れるとすぐボロボロになってしまいます。土の付いている根(石突き)は必ず引きちぎり捨ててから容器に入れてください。次に、持ち帰ったものを洗う時は、少し塩をまぶして水に漬けると粘りがでて崩れにくくなります。いずれ、すすぐ程度に収める、ということを前提にしてきれいに採取することです。この菌は条件が整えば山中サワモダシだらけになりますが、少し狂うと全く発生しないので、大量に取れた時は2〜3年は持たせるよう、大切に消費しています。なお、タケノコの時期にも大発生しますので、前年度取れなかった方はここで挽回するのも一つの方法です。調理法はみそ汁、煮付け、そのまま大根下ろしに混ぜる等、オールマイテイです。
(4)カノカ
 ヒダナシタケ目 エソハリタケ科 ブナハリタケ属の和名「ブナハリタケ」です。カヌカ、カノカと言われています。名前の由来は、ザラザラしている感じが「鹿の舌」に似ていることから、カノシタ→カノカ→カヌカと変化していったのでないでしょうか。和名の通りブナの伐根や倒木に重なって群生します。運がいいときは一カ所でリュック一杯になるので、できるだけ軽くなるようにと、水分を絞ってしまい込みます。なお、結構白い虫が肉の中に潜んでいるので、いったん塩水に浸してから熱処理をしてください。調理法は味がしみこみやすいので煮付けに最適です。
(3)マスダケ
 ヒダナシタケ目 タコウキン科 アイカワタケ属で和名は「マスタケ」です。名前の由来は、菌の色が、紅マス等に見られる赤身肉に似ていることからついた、と言われています。このマスダケもトビタケ同様、写真のように若くて形が丸い時は、まさに寒天の様にサクサクした歯ごたえできわめて美味です。でも伸びきってしまったものは、まるで豆腐のオカラみたいになボサボサした歯ごたえになり、きわめて不美味な菌に変身します。調理法はこれも煮付けに最適です。
(2)マイタケ
 ヒダナシタケ目 タコウキン科 マイタケ属で和名「マイタケ」です。栽培ものが出回る前は、本当に貴重品であったのですが、今は珍しくない菌になってしまいました。シロフとクロフと言われている二つの種類があり前者をシロマイタケ、後者をマイタケと言います。鹿角では9月中旬から10月初旬にかけナラの根もとに発生します。以前、写真のように10Kgを越す大きな塊を採取したことがありますが、まさに舞ってしまいました。とても食べきれないのでカンズメにすべく電子レンジで熱処理をしたら家中マイタケ独特の焦げ臭いにおいが漂い、すごく幸せな気分に包まれました。夢よもう一度と、大物を求めて散策していますが、残念ながら小振りなものにしか巡り会えません。調理法は煮付けやキリタンポ等色々な料理法が研究されています。

鹿 角 の キ ノ コ

1、鹿角の位置  鹿角市は盛岡市・弘前市・秋田市を結ぶ線上に位置し、四方を山に囲まれた典型的な盆地の地形になっており、山菜同様豊富なキノコの産地にもなっております。

2、鹿角の概略紹介 本質的には何の変哲もない鹿角盆地の片田舎なのですが、幸いなことに、南に世界的に有名な玉川温泉を含めた八幡平国立公園、北に十和田湖国立公園を擁し、その観光客を見込んで高速道路「東北道」のインターチェンジが鹿角八幡平・十和田・小坂と3箇所に開かれており、年中観光客でにぎわっている地域です。その2大観光地の十和田・八幡平は標高1000m〜2000mの高山ということもあり、絶好の山菜の産地としても隠れた人気を呼んでおります。

3、鹿角の地域別キノコ分布 
(1)鹿角の北地区→小坂町の樹海ラインも含めた十和田湖周辺 
(2)鹿角の中央地区→花輪スキー場の裏山にあたる瀬の沢川流域
(3)鹿角の南地区→八幡平周辺
 ※山菜の分布と全く同じですが、キノコに関しては標高があり気温変化の大きい南地区の八幡平周辺が主流になり、標高の少ない中央地区や北地区は、どちらかと言えばその年の条件に大きく左右されるようです。

4、鹿角のキノコ 
 
限られた条件のところに一斉に顔を出す山菜と異なり、キノコは同じ時期に、全く違う条件の山で発生します。でも、休日しか動けない私は、とても限られた時間に全てを回りきれるほどの体力も時間もありません。ここに紹介するキノコは、過去に私が採取したもののみに限らせていただきました。そのため、鹿角に発生するほんの一部のキノコしか紹介かねますので、何卒ご了承お願いします。写真は、今まで取ることのみに熱中し、撮る方は全く怠っておりましたので、粗末なものしかありませんが何卒ご勘弁下さい。今シーズンからは少しまじめに写真を撮り、このページを充実させたいと思っています。なお、写真のある方はご提供いただければ幸いです。

(1)トビタケ
 
ヒダナシタケ目 タコウキン科で和名「トンビマイタケ」です。このキノコは古いブナの風倒木や伐根、そして生きている大木の根元に発生します。時には一カ所で背負いきれないくらい大発生することもあります。最初のうちはボール状の白い塊ですが、だんだんとひだが伸びてき、色もいわゆるトンビ色に変色します。この白い状態のものが最高品質のトビタケですが、手に触れたところから次第に黒く変色してきます。トンビ色に変色したものはもういくら触れても黒変はしませんが、木の皮を咬んでいるような堅さになり商品価値を全く失ってしまいます。私たち素人が出会うのは写真のようにトンビ色になってしまったものが大部分で、いつも、もう一週間早ければと後悔しています。発生時期は8月初旬から9月初旬までで、全くの夏キノコです。そのためアブやスズメバチに追われることが頻繁です。いつかは伐根の上にひょっこりマムシが座っていたこともありました。調理方法は鶏肉を混ぜ、しょう油と唐辛子できっちり味付けをすれば、最高のおつまみになります。