(13)ウルイ
 ユリ科ギボウシ属の和名「ギボウシ」です。高山の湿原に行けば小振りのミズギボウシやコバギボウシの変種であるタチギボウシ等がありますが、山菜として採取するものはトウギボウシ(オオバギボウシ)です。鹿角ではなぜか岩手県の田山方面に大量に植生しております。塩蔵しても、なぜかうまく塩が抜けないので、当座食べる分だけを採取しています。調理法としては、お浸しや煮付けにも使用しますが、これを一番おいしく感ずるのはミズと一緒につけ込んだ一夜漬けと思っているのは私だけでしょうか。なお、このウルイの塩蔵は、重しをしないでビニールの袋等に入れておけば、簡単に塩出しが出来ると聞きましたが、まだ試していません。いずれ、重しをして塩蔵すれば何日流水にさらそうと頑強に塩が残ってしまい、結局は捨てざるを得ませんでした。


 
(14)ミズ
 
イラクサ科ウワバミソウ属の和名「ウワバミソウ」です。イラクサ科にはミズ属のミズという種類があるのですが、私たちがミズと言っているものとは大きくイメージが異なります。なお、根の赤いアカミズと緑色をしたアオミズがありますが、これはウワバミソウの変種なのかもしれません。詳しい方はお教え下さい。ミズは早春から晩秋まで収穫でき、早いものはそのままでも食べられますが、一般的には3寸折りにして皮を剥いで調理します。調理方法としては、
@ウルイと混ぜての一夜漬け、
A油炒め、
B叩いて山椒と混ぜてのミズたたき等が知られています。
 塩蔵しても良いのですが、皮が強くて歯が悪くなった私たちの年代はちょっと遠慮しています。ただ、塩蔵の前に沸騰したお湯を通せば皮が柔らかくなると言うことを聞いたので、試してみるつもりです。秋になると葉の先にムカゴが付き、これをミズダマとして採取する人もいますが、私は面倒なので取りません。


 7月の初旬、このミズを取った段階で、山菜シーズンに終わりが告げられます。私は秋のキノコ取りも好きですが、長い冬をじっと堪え忍び、ついに来た春の山を駆けめぐる山菜取りが無性に好きです。そのため、このミズ取りに向かう時、これで今年の春が終わったかという何とも言えない寂しさに襲われます。



   
参考文献  平凡社「日本の野生植物 T U V」 保育社「原色日本植物図鑑 木本編 T U」

(12)フキ
 キク科フキ属の和名「フキ」です。その中の亜種である和名「アキタブキ」学名「subsp.giganteus(Fr.Schm.)Kitam.」は本種のフキに比べ、葉径1.5m、葉柄は2mになるものもあります。秋田の人間なので秋田県にあるフキが日本一と考えていましたが、平成11年10月に北海道釧路へ旅行に行った際、釧路市から阿寒湖までの道ばたに植生している大きなフキを見て、正直言って「負けた」ことを実感しました。北に行くほど大きくなるのでしょうか。このアキタブキは本州北部、北海道、樺太、千島に植生しています。ところで、食用にするものは直射日光の当たらない風通しの良い林の下に生えるものが最高です。葉柄の色は真っ白から薄緑色のものがよく、赤色が入ると間違いなく歯切れが悪くなります。
(11)ワラビ
 シダ植物イノモトソウ科の和名「ワラビ」です。最も標準的な山菜で、ちょっとした道ばたでも大量に取ることが出来ます。調理方法は塩蔵したものを軽く水洗いし、次に大きな容器で水を沸騰させて、それに小さじ一杯ほどの重曹(炭酸水素ナトリュウム)を加えたお湯に入れ、すぐ火を止め、浮きふたをして一晩おきます。その後、流れ水にさらせば一日で塩とアクが抜け、食べられる状態になります。なお、流れ水だけでの塩・あく抜きでは、あくが完全に抜けきるまで1週間ほどかかり、わき水みたいな冷水でない限り、間違いなくワラビがヌルヌル、ブヨブヨして食べられる状態でなくなります。なお、この熱水処理をする時に銅鍋を使用すれば、なぜか芯まできれいな緑色になり、見るからにおいしいワラビになります。でも、重金属汚染にはならないのかなと少し心配しながら大量に食べていますが・・・・・。調理法としては、市販のそばつゆに辛子を適度に混ぜた辛子しょう油に一晩ほど浸したものが最高と私は考えています。みそ汁に、煮付けにと広い範囲にわたって活用できます。
(10)タケノコ(ネマガリタケ)
 イネ科ササ属の和名「チシマザサ」の新芽です。ササ属は大きく分けてミヤコザサ節・チマキザサ節・アマギザサ節・チシマザサ節・ナンブザサ節の5節に分かれ、このチシマザザはネマガリダケ、コウライザサと言われているササを一括した総称だそうです。ですから、タケノコは正しい名前でなく本質的にはササノコとつけなければいけないのかもしれません。鹿角では「十和田湖を含む小坂系統」、「田山の四角岳の流れを汲む瀬の沢、不老倉、細地系統」そして「夜明島を含む八幡平系統」の3つの地域に分かれます。十和田湖と四角系統のものは甘くて柔らかいのですが、八幡平系統は少し風味が少ないのではと言うのが皆さんの意見です。私もそう思っています。タケノコは皮むきが大変でしたが、今は皮むき機械を仕入れた関係で本当に楽になりました。調理方法はすぐ食べる場合は皮を剥いて固い節の部分を取り除き、そのまま味噌汁や煮物に入れると最高です。でも生のままではすぐ悪くなるので、ゆでて一晩ほど流れ水に浸してあくを抜き、カンズメにするか塩蔵保存をします。保存の前にあく抜きをしないと、タケノコの表面に真っ白な粉が吹き、のどがひりひりするようなあくの味が残りますので要注意です。でも、抜きすぎると全く風味がなくなりますので、一晩がちょうど手頃です。鹿角の山菜取りは、フキと並んで大量に取り一年間にわたって風味を楽しみます。
(9)アイコ
 イラクサ科ムカゴイラクサ属の和名「ミヤマイラクサ」です。木漏れ日の差し込む杉やブナの下に群生します。全草に棘があり、うっかり素手で触ると、泣きたくなるほどの痛さが襲います。これを取るときは軍手でもやばいので、私はゴム手を使用しています。でも、味は抜群で毎年沢山の人がこのアイコを求めて山に入ります。調理法としては、煮上げてからお浸しにするのが最も一般的です。辛子しょう油でもマヨネーズ和えでもよく、アスパラに似た癖のない風味は沢山のファンをもっています。なお、大量に取ったときは塩蔵しても良いそうです。
8)ゼンマイ
 シダ植物ゼンマイ科の和名「ゼンマイ」です。日当たりがよく、少し土の乗っている岩盤に群生しています。なぜか危険な岩盤に多く植生するので、滑落事故が絶えません。ゼンマイ取りにはスパイク付きの長靴を準備したいものです。
ゼンマイはそのまま食べてもあまりおいしくありませんが、乾燥させると歯ごたえと風味が増し、高級な山菜として生まれ変わります。おいしく作るコツは、ゆでた後、固い部分を徹底して取り除き、よくもんで繊維を十分にこなすことです。これも「山菜の王様」として君臨しているようです。考えてみれば山菜の王様は何人いるのでしょうか?
 ※なお、同じシダ植物ゼンマイ科でガグマ・ヤチゼンマイと言われている「ヤマドリゼンマイ」があります。これは湿地帯に群生しているので実に簡単にそして大量にとることが出来ます。ヤマドリゼンマイより大きいものを「オニゼンマイ」というそうですが、これも同様に食べられます。ゼンマイに比べ少し固いような気がしますが、ゆで方ともみ方を念入りにすれば解決するのではと考えています。調理方法は、乾いたゼンマイを熱湯に入れ、浮きふたをして冷えるまで置き、その後流水にさらしてあく抜きをした後、鶏肉等を混ぜた煮付け等に使用します。ゼンマイ自身にはくせがないので、他のものを大きく引き立てる役割を果たします。
(7)シドケ
 キク科コウモリソウ属の和名「モミジガサ」です。私の入る山ではあまり多く取れませんが、なぜかボンナと一緒のところに植生しているので、ついでに一つかみ程度取ってきます。どこかに行けばこれだけ群生している場所があるのでしょうね。調理法はボンナと同じですが、あくがそれよりも強いので、あまり沢山は食べられません。なお、市場ではボンナよりも高い値段で取り引きされています。ただ、葉の形がトリカブトと間違えやすく、結構この時期になれば食中毒になったり尊い命を落とす人が後を絶ちません。一番間違えない方法は、どれがトリカブトかということをはっきり認識することです。そして、お湯通しをする前にいったんシート等に広げて目的の山菜以外は捨てることです。不思議なものでトリカブトのそばによく似たシドケが目に付きますからね。皆さん注意しましょう。ベテランの方も油断大敵です。
(6)ボンナ
 キク科コウモリソウ属の和名「ヨブスマソウ」です。地方ではボンナ、ホンナと呼ばれています。雪が融け少し気温が上がってきたかなという5月中旬から下旬にかけて一斉に顔を出してきます。写真のように茎に毛の生えたものをケボンナと言っていますが、ボンナの変種なのかもしれません。私は、特に気にすることなく採取しています。調理法として、我が家ではゆでてお浸しにして食べます。料亭に行けば、皮を剥いてかつお節を振りかけ小さな皿に数本つけていますが、我が家では大きな皿に山盛りにし、それをヤギのようにモリモリ食べるという、実に原始的な食生活をしています。このボンナは保存が利かないのであまり取らないようにしています。
(6)ウド
 ウコギ科タラノキ属の和名「ウド」です。鹿角では5月中旬頃、日の当たる斜面に群生します。太いものほど柔らかく味も抜群です。ウドはゆでてから皮を剥き塩蔵しますが、これも相当あくが強いので、黒い汁が上がってきたら2〜3回程度水洗いをして再塩蔵すればきれいなものを食べることが出来ます。食べ方としては、酢味噌あえに、みそ汁に、油炒めにと多彩な調理が出来ます。なお、タラノキと同属ですので、葉先を天ぷらにすればタラの芽同様においしく召し上がることが出来ます。
(5)タラノメ
 セリ目ウコギ科タラノキ属の和名「タラノキ」の芽です。同じ時期に芽を吹くウドより鋭い棘をつけるウコギ科ハリギリ属の「センノキ」、ハリの全くないウコギ科ウコギ属の「コシアブラ」も同様にべられます。高い枝の先に芽をつけるので、カギの付いた棒で枝を引っ張りながら採取します。よく、枝をナタで切り温室栽培をして出荷されていますが、このタラノキは途中から切断すれば、切断面の導管から病菌が入り、枯れてしまいます。この枝切り後のタラノキ林はまさに「死の林」そのものです。面倒でも一つ一つ手で取りましょう。

かみさんに軽トラを運転させ、私は道ばたに生えているニョウサクの若い芽を切り、荷台に投げ込むというやり方でこのくらい収穫しました。フキと異なり1カ所で大量に収穫できないため頻繁に山へ通う必要があります。
この時期、同じセリ科の植物で似たようなハナウドがあります。でも、ハナウドは左下のように茎が中空になっています。右下のニョウサクは中実です。なお、よく見ると葉の形もかなり違います。
(4)ニョウサク
 正式和名はセリ科シシウド属の和名「エゾニュウ」です。地方によってはサクとかエニョウとか言われています。名前から考え、ウドの仲間かと思っていたら、何とウドはウコギ科タラノキ属でした。最初は、臭いし、黒い汁が出るしで、こんな物食えるかと踏んづけていたのですが、これが又絶品だと聞き、今は取りまくっています。ただ、真ん中の柔らかい若芽しか食べることが出来ないので、採取効率は抜群に落ちます。取った後は、ゆでで皮を剥き一晩ほどあく抜きをしてから塩蔵します。そのまま皮を剥いて塩蔵してもいいのですが、何回洗っても真っ黒い汁が絶えないので、この方法で保存しています。食べ方はそれ一品でもいいのですが、フキと、あるいは鶏肉と混ぜて油炒めにすればさらにニョウサクの良さが引き立ちます。
(3)サシドリ
 タデ科の和名「イタドリ」です。地方によってはスカンコとかスカンポと言われていますが、同じタデ科のスイバ(ヒメスイバ)とは異なります。二つの採取方法があります。
 @一つは左の写真のような、春一番に土から出たばかりの玉状の若芽を切り取り、軽くゆでて酢の物にして食べます。トロッとした感触はまさに春の風味を沢山含んでおります。秋田県では県南地方でこの食べ方をすると聞いております。
 Aもう一つは、右の写真のように、茎が20〜40cmに伸びた頃を見計らってカマで刈りとり、お湯をくぐらせた後、皮を剥き塩蔵します。
湯通しをするときの注意ですが、簡単に溶けてしまうので、お湯の中をくぐらす程度に留め、絶対に再沸騰させないで下さい。
サシドリはあくが少ないので、いったん塩蔵すれば手をかけなくてもいいのですが、重しをした後相当量の水が上がりますので、いったん上澄みを捨て、更に塩を追加すれば万全です。調理法としては油炒めが最適です。最後に、サシドリは相当穴が大きいので、トラックの荷台一杯に採取しても、塩蔵すれば小さなタルにこぢんまりと収まってしまうので拍子抜けします。その点では、奥山にある「オオイタドリ」を採取すれば、幾分効率が違うのでないでしょうか。
(2)アザミ
 キク科アザミ属の和名「アザミ」の仲間は、どれも若芽を食べられるそうですが、鹿角ではサワアザミやモリアザミを食用にしているようです。雪の下から赤色のロゼットが見える頃は、コゴミすらも出ていない時期ですので、飢えたオオカミみたいに掘り起こして持ち帰ります。あくが強く、決しておいしいと言えるものではないのですが、野菜が欠乏しているこの時期、ゆでて冷水にさらしたものをみそ汁に放すと、何とも言えない春の香りを漂わせてくれます。保存食品でないので沢山取ってきても結局は悪くしてしまうのですが、性懲りなく無駄にしてきました。物の本によれば、味噌漬けにすればいいとも書いていました。
 なお、それから1〜2週間ほど経てば茎が伸びて20〜40cmほどになります。この時期のものは釜で刈り取り、軽くゆでた後、皮を剥いて塩蔵保存をします。ただ、あくが相当強いので、そのままでは、自分が出したアク汁でみんな真っ黒になりますので、黒い汁が目立ってきたら水洗いをし又塩蔵する作業を数回すれば、きれいなアザミを食べることが出来ます。アザミの茎は炒め物に最高です。
なお、下の写真ですが専門家にお聞きしたら葉の裂け方は個体差なので、同じ種類と考えてほぼ間違いないとのお話でした。
1、鹿角の位置  
鹿角市は盛岡市・弘前市・秋田市を結ぶ線上に位置し、四方を山に囲まれた典型的な盆地の地形になっております。


2、鹿角の概略紹介 
本質的には何の変哲もない鹿角盆地の片田舎なのですが、幸いなことに、南に世界的に有名な玉川温泉を含めた八幡平国立公園、北に十和田湖国立公園を擁し、その観光客を見込んで高速道路「東北道」のインターチェンジが鹿角八幡平・十和田・小坂と3箇所に開かれており、年中観光客でにぎわっている地域です。その2大観光地の十和田・八幡平は標高1000m〜2000mの高山ということもあり、絶好の山菜の産地としても隠れた人気を呼んでおります。

3、鹿角の地域別山菜分布
(1)鹿角の北地区→小坂町の樹海ラインも含めた十和田湖周辺 
(2)鹿角の中央地区→花輪スキー場の裏山にあたる瀬の沢川流域
(3)鹿角の南地区→八幡平周辺

4、鹿角で採取できる山菜  


(1)コゴミ
シダ植物オシダ科の和名「クサソテツ」です。春を告げる山菜として私たち東北の人間を楽しませてくれます。あまり日が当たる場所には貧弱なものしかありませんが、木漏れ日のはいる杉林に太い見事なものを見ることが出来ます。鹿角では5月の連休を境に、雪消えと共に地中から芽を出します。食べ方としては、私自身は熱湯でさっとゆで、そのまましょう油をかけて酒のつまみにします。でも、料亭に行けば、クルミあえ等にして出てきます。また、酢の物や天ぷらにしてもおいしいそうです。
 私は、春一番の新鮮な山菜ですので、大きな皿かどんぶりに山盛りにし、しょう油をかけてモリモリ食べるのが一番と考えています。何回か冷凍処理をしましたが、氷の体積膨張による細胞膜破壊で、全く歯ごたえがなくなってしまいました。次回は塩蔵してから冷凍処理をしてみようと思います。

鹿 角 の 山 菜