1、生ハムの「仕込み」仕事
令和3年12月19日、昨年に引き続き、生ハム仲間である茨城県稲敷市の鹿熊牧場で飼育された、通称「
かくま豚」の豚骨付きモモ肉2本が入荷した。
お値段は?骨付き豚後脚は「混合肉」に分類され、「100g → 80円〜90円」が相場で今回は88円であった。総重量 21.54Kg×880円+送料等=2万円+αで収まった。
R03/12/19(日)早速、太い血管に残っている血を絞り出した後、塩を擦り込んだ。 この作業を1週間毎、3回繰り返した後、
R04/01/09(日)数日、塩抜きをした。
R04/01/13(木) 塩抜き後、2カ月の「低温乾燥工程」に入った。
この期間は、原則、「最高気温」が摂氏5度以下という、冷蔵庫並みの低温が要求される。特に乾燥初期は、表面の塩分濃度が極端に希薄なので、温暖な環境でこの工程を強行すれば、この高価な肉塊は確実に腐敗してしまう。
幸いにして北東北に位置する秋田県鹿角地区は12月中旬〜3月初旬頃まで冷蔵庫状態なので、暖房のない部屋に吊しておくだけでも低温乾燥が可能である。この工程で適切な塩分濃度に凝縮されると、真夏の猛暑環境でも腐敗する心配は無用である。 下記のグラフは2020年12月〜2021年3月の最高・最低・平均気温のデーターである。改めて、12月中盤〜3月前半は確実に寒いのが分かる。
低温乾燥工程に入った2本の豚後脚、現在は各々10Kgほどあるが、2年を経過するとほぼ半分の重さになり、2年後の「骨を除いた実質可食部」は3Kg前後と言われている。
3月10日(木)2ヶ月に及ぶ低温乾燥工程が終了し、常温熟成工程に入った。
今後は、例え30度を超す猛暑が続いても腐敗することはない!
5月22日(日) 生ハムにパテ(米粉+黒こしょう+ラード)を貼り付け、その後、皮下脂肪部分にオリーブオイルを塗布した。
これで、生ハム全体の乾燥と皮下脂肪の酸化が緩やかになるはずである。
現在、「常温熟成」中の生ハム4本である。
右2本は2020年(R02)12月に仕込んだ物、左2本は2021年(R03)12月に仕込んだ物である。
右2本は今年末に、左2本は来年末にカットの予定である。
なお、夏季に猛暑が続いたときは、過度な脂肪の酸化を和らげる目的で、米冷蔵庫へ避難させる予定である。
2022/08/21
豪雨の後、猛暑(残暑)が続いたので、急遽、米冷蔵庫に待避させた。ただ、そのまま入れると冷蔵庫内部が獣臭くなるため、大きな袋に入れてから格納した。
2022/09/28
ボチボチ、新米が入荷するというので、急遽、生ハムを米冷蔵庫から取り出し、以前の場所に移動した。毎回の事ではあるが、冷蔵庫に入れる前はそんなにカビが目立たなかったけど、冷蔵庫内では、袋に密封する関係で高湿度になり、結果、カビだらけになっていた。このカビ、表面を覆うものの、高濃度の塩分のおかげで肉には侵入しない。ちなみに、カビに覆われた右の写真、皮下脂肪部分は、あまりかびていないが、米粉+ラードで練ったワックス部分は、ひどい状況になっていた。ただ、カビが生えると乾燥しにくくなるという事なので、この状態であと1年間熟成させ、2023年12月、カットする直前に高圧洗浄機でカビを吹き飛ばすつもりである。
2、解体(カット)作業
今から2年前の2019年(平成31年)12月21日に仕込んだ1本、及び、2020年(令和2年)12月12日に仕込んだ1本をカットした。
何故、1年物1本と2年物1本なのか? 実は、情けないことに、生ハム仕事で一番辛い「中腰でのカット作業」がかなり負担になって来た。そのため、近いうちに「生ハム作り」をやめるつもりで、平成31年は1本だけ仕込んだ。
その後、ある知人から、自分はスライサーでカットしているので、全く「苦痛感」はないという話を聞き、次回(令和2年)には、気を取り直して3本を仕込んだ。結果として、今回は1年物&2年物を各々1本カットすることになり、味の比較が可能となった。そして、カット作業を電動スライサーに変更した。
「生ハム道」?から外れているのかもしれないが、精神的にすごく楽になった。
余談であるが、私が生ハム原木1本を手作業でカットするには、最低でも5〜6時間が必要である。ただ、中腰での作業になるため、腰に爆弾を抱えた私の場合は2〜3日掛かりでの大作業になる。その点、スライサーがあれば大きな肉ブロックにカットするだけの簡単な手作業で済むため、ウソみたいに楽になった。
下の写真はレマコムの
RSL-S19 、標準価格81,000円を20,000円で販売していたのでこれに決めた。マルの数が一桁多いプロ用と比べるとオモチャであるが、個人用としてはこれで十分である。なお、ダイコンやカブのスライスも出来るので、千枚漬けも楽しめる。
カットした肉片は空気に触れると酸化するので、当座食べる分を除いて、真空パック処理をした。保存は、冬季は常温、夏季は冷蔵、しばらく食べない時は冷凍保存が良いと思う。なお、パックの中味は市販品と同じ「食べきりサイズの50g」にした。
ところで、この生ハムの味は? 基本的には、常温で熟成しても腐敗しないくらいの「高濃度塩蔵肉」なので、間違いなく塩辛い。生ハム塾で初めて1年物を試食した時は「美味しいけど、しょっぱい」であった。しかし、その直後に提供された2年物を口にした瞬間、「ん
美味しい!」という言葉が出た。プラス1年の間に、タンパク質が分解して生じた旨味成分(アミノ酸→チロシン)が肉を包み込み、舌が塩味を見失ったのだと思う。結果、お酒が進むのが欠点である。 笑
最後に、気になる生ハム原木1本のお値段であるが、
@ピンキリではあるが、
市販輸入品だと2年(24か月)熟成物で1本 4〜5万円 程度。
A生ハム塾に参加すれば、管理に必要な人件費を主催者に支払い、1年後に1年物を手渡されて1本3万円 程度。これを、自宅で1年間追熟させ、2年物として楽しんでいる方が大部分だと聞いている。 ただ、会場までの旅費&宿泊費は別途である。
B自作すれば、人件費無料となり、材料費だけの支出になるため、豚もも1本分、1万円程度。 ただし、労力&失敗のリスクは自分もち。
※一番手軽なのは、@? A? B?
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