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法印ときつね

 むがしむがしあったど。
 むがし 毛馬内に法印という別当さんがいました。
あるとき 大湯の在郷の農家に,春祈祷を頼まれて出かけていきました。蟹沢の坂を上ると,庚申さんがありました。その上に狐が眠っていました。法印さんは狐を,びっくりさせたらなんぼ面白いだろうかと思いました。狐のそばに行ってほら貝を吹きました。狐は法印さんを恨めしそうな顔をして逃げていきました。
 春祈祷が終わると,お祝いが始まりました。お酒が出ました。法印さんは,日が暮れないうちに帰ろうと思って腰廻の坂を上っていきました。だんだん暗くなってきました。真っ暗になりました。法印さんは,
「暗くなってしまったな。困ったな。」
と1人ごとを言いました。すると遠くで光が見えました。法印さんは泊めてもらおうと思って行きました。品の良い白髪のおばあさんが出できました。
「道に迷ったしか。はえってくだい。まんつ 火っこさ あだってくだい。」
と言いました。そしてくるっと回ってお歯黒を塗りまじめました。またくるっとまわって法印さんのほうをみました。法印さんはびっくりしました。なんとおばあさんの顔は,目がらんらんと光り,口は耳までさけ,髪はぼうぼうのお化けでした。法印さんはおっかなくてじしじしーと後ろへ下がりました。法印さんは,土間だと思っていたところが川でした。法印さんが落ちていく様子を見て,ゲラゲラと笑っている狐が居ました。法印さんがびっくりさせた狐に,だまされたのではないでしょうか。                                  どっとはらぇ
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