甚平川原の狐
毛馬内の甚平川原に、人をだます狐がいました。あるとき若者が甚平川原に行きました。すると狐が川に顔を映して化けている最中でした。ひっくり返ったと思ったら、綺麗な姉さんに化けました。しかし後頭部を化け忘れて狐の毛が見えていました。若者はおかしくて仕方がありませんでした。若者は
「姉さん姉さんどこさえぐどごだんすか。」
と聞きました。毛馬内につくと、入り口に「かどや」という酒屋がありました。若者は、
「酒っこ飲んでえがねぇが。」
と言いました。狐が化けた姉さんも酒っこすきなものですから、二人で「かどや」に入りました。若者はたくさん飲ませたあと、
「姉さん姉さんうしろこんどめぇでらんさぇ。」
狐はあわてて手を後ろに手やりましたが、間に合いませんでした。狐は若者にあちこち叩かれましたが、酒を飲んでいましたから、あっちにふらふら、こつちにふらふらしてようやく山に逃げていきました。
方言の説明
・じんべから=甚平川原 ・うしろこんど=後頭部 ・かまり=におい
・どこさえぐどこだんす?=どこへいきますか ・めでらんさえ=見えていますよ
・どてん=びっくり