猿の嫁になった娘
むがし八幡平の山奥に娘三人持った爺様がいました。
ある年のこと。日照続きで、田がみんな乾いてしまうところでありました。爺様は、山へ行ってみると、猿がたくさんいて川の水を止めていました。爺様は、
「猿ど、猿ど その水を放してけろ。放してければ、娘一人ける。」
猿は、
「へば、水放す。」
末っ子の娘が、猿のところへ嫁に行きました。猿が姑礼に来ることになりました。餅をついたので、臼のまま背負って来ました。米代川に沿ってくると花が咲いていました。娘は、
「爺様、花っこすぎだたぇに持ってえげば、なんぼが喜ぶだが。」
と言いました。猿は、
「おれ、取ってくる。」
と言って、臼を地面に下ろそうとしました。娘は、
「そこさ 臼 おろへば 蟻塚にへぇられるがら 臼 しょったままあがってけろ。」
と言いました。
「この花が。」
「もっと芯っこ。」
「これか?」
「もっと芯っこ。」
猿の問いに娘は、どんどんと芯の方へ上げてやりました。猿は臼を背負っていて重いので木が折れて米代川へさぶんと落ちてしまいました娘は、おぼれて流れていく猿を引き上げて、
「猿皮三十、身六十、こんべ(頭)十で、ちょん(ちょうど)百だ。」
と売って歩きました。
娘は、そこの村の米屋に嫁に行って幸せに暮しました。
方言の説明
・まま=ご飯 ・とぶ=どぶろく ・きれな=きれいな
・芯こ=上 ・こんべ=頭 ・ちょん百=ちょうど百